2013年2月13日水曜日

おとうちゃんのにっこり日記 - その5


 日曜日の朝、布団の中でウトウトとしていると「おとうちゃん、スクールに連れてって」と娘が私を揺り起こした。どうやら今日は、娘の通っているスクールの開校日らしい。
「今日はおとうちゃん、お休みだからゆっくり寝かせて」と私が言うと「おとうちゃん、今日はお休みなの?」と娘。
「そうだよ」と私が答えると「じゃあ明日は?」と娘。
「明日は、おとうちゃんは、お仕事。ああちゃんは、お休み」
「ふうん」
 そして、少し間があってから「ああちゃん、今日は一人でスクールに行く」と娘が言った。それは5才の娘が自分で決めた、初めての一人での登校だった。私は「じゃあ、一人で行ってみたら」と言ってはみたものの、心配で寝ていることが出来なくなってしまった。
 「いってきま~す」という娘の声が聞こえた後、私は急いで服を着替えて後を追った。娘は家を出ですぐに駈け出したのか、既に娘の姿を見つけることができなかった。曲がり角のところまで走って、そっと道の先を見ると、背中に比べて少し大きなリュックを揺らして走る娘の後ろ姿が見えた。気づかれないようにじっと見ていると、娘は小さな四つ角の手前で立ち止まり、腰を曲げて覗きこむように何度も何度も左右を見てから道を渡っていた。その場所は、少し前に二人で自転車で走っていたときに「左右をちゃんと見てから渡るんだよ」と私が注意をした場所だった。話を聞いているのかなと思っていたけれど、ちゃんと覚えていてくれていたのだ。
 直線が長く続く道では、隠れるところがないために、あまり近づくことができない。私は、小さな背中を見失わないようにしながら、少し距離をおいて娘の後ろを歩いた。住宅街では、娘は庭先に咲く椿の花を眺めて、しばらく立ち止まったりもした。そして、40分ほどの時間をかけて、娘は無事スクールにたどり着いた。
 私は、娘が帰ってきたら、一人でスクールまで行けたことを褒めてあげようと思っていた。でも娘は、いつもと変わらない様子だったので、何も言わないことにした。成長していくということは、娘にとっては、とても自然なことなのかもしれない。

(これは『お母さん業界新聞 茅ヶ崎・平塚版(春号)』に掲載予定のものです)